武道 第17回創心館長野実践塾審査会・合宿レポート2013/04/18 

春の暖かい空気と少し冷たい風が入り交じる気持ちのよい晴天日、宇城塾長を迎えての第17回創心館長野実践塾少年部審査会および合宿が2013年3月16日・17日の両日、長野県上伊那郡辰野町の荒神山スポーツ公園内施設にて実施された。審査会・合宿には宇城拓治師範代および東京、大阪、三重の各支部からの代表も参加した。

初日は塾長による合宿参加者への稽古指導が行われ、2日目は10時から少年部審査会が行われた。父兄が見守る中、塾長を審査委員長とする3名の審査委員の先生を前に7名が審査を受け、また、前回昇段した4名の黒帯も型と分解組み手の確認を受けた。日ごろの練習成果を精一杯披露し、審査を終えた子供達に、宇城拓治師範代から成績発表が行われた。今回の審査では、6名が昇級し、1名が昇段した。その後、塾長による「技の検証」が行われた。

■ 調和の力で投げを決める子供
大人の突きに対し、黒帯の子供達が腕受け投げの技をかけると見事に技が決まった。また、追突きした姿勢の大人の身体をさらに複数人がつながって支えた状態のスクラムであっても、正しく技が決まるときれいに投げられた。一方で、1人の突きに対する腕受け投げですら、大人はできなかった。塾長は、左脳に知識の詰め込みを行うとどんどんできなくなってしまうのだ、ということを説明した。そして、野球やサッカーなど勝ち負けを価値の中心に置くスポーツは衝突や競争の心を生み、イジメなどの精神が育まれてしまうこと、また、スポーツが取り入れている筋トレは体に対して同じような反応をもたらしてしまうことを説いた。
現代では左脳への知識の詰め込みと同時に、スポーツなどによる競争心や対立する身体の形成が一緒になって、対立や競争を生み出す風土が出来上がってしまっているのであろう。本来の武道は「衝突しない」身体と心を育むのに重要であると感じた。






突いてくる大人に対し、投げを決める黒帯の子供達




大人が同じように行っても投げが決まらない







大人複数人のスクラムも塾長の指導で、投げ崩してしまう



■ 心→気→身体の流れでコントロールされる
車輪付きテーブル一台を大人が取り囲み、手で押さえて動かないようにした状態であっても、塾長は気を送ることによってテーブルを動かしてしまった。これは、塾長の「心」の発動によって、テーブルを囲んで押さえている集団をコントロールしてしまった結果であろう。「心→気→身体」の流れで、他者の「身体」まで、「心」によってコントロールできることを示している。また、この状態のテーブルを、大人が力で押しても動かすことはできず、もちろん子供も力で押しただけではびくともしなかったが、塾長が腕受け投げのタイミングで、腕受けを行った直後に押すことを子供に指導すると、テーブルを動かすことができた。



大人達に押さえられたテーブルは1人の力では動かない






腕受けを行ってから押すと子供でも動かすことができた


さらに、塾長は、子供達にテーブルを囲ませ押さえさせた状態で、両手を触れない状態でテーブルを「心」の思う方向へ動かす、という技を見せ、子供達から驚きの声が上がった。


気でテーブルを動かす塾長



■ 女性特有の力
また、塾長は、女性と男性は平等ではなく、女性にしかできない事柄があり、平等の考え方は逆に損をするということを、正座して隣同士腕を組んだ集団を形成させて示した。即ち、この状態の集団が、一斉に同じ方向に体を傾けても、通常、元に戻ることができる。しかし塾長が気を送ると戻ることができなくなる。男性が集団の端の人を引っ張って起こそうとしても無理であったが、これを女性が行うと力に頼らずとも起こすことができた。


身体を傾けた状態で塾長に気をかけられるとかたまってしまう



男が力で引っ張っても戻すことは不可能



女性は力に頼らずこの集団を戻すことができた


■ 気に逆らう動きの危険性
また、塾長に気を送られた状態で体が「動けない」と感じているにもかかわらず、頭でこれを打ち消し、気に逆らった動きを強引に行うと、別方向からの力に驚くほどもろくなり、危険きわまりない、ということが示された。即ち、正座して隣同士腕を組んだ集団が一斉に同じ方向に体を傾けて気によってストップさせられた状態から、頭で強引に起きようとした場合、前からの力で簡単に後ろへ倒れた。

また、一人で床に仰向けに寝て、気を送られ起き上がれない状態では、腹を踏まれても平気であったが、強引に起きようとしたときに踏まれると非常に苦しい状態となった。このようなことから、気に逆らった動きは体を非常に脆くし、危険であると感じた。逆に気に従った身体の状態では、第三者から見たときに一件不利な状態に見えても、実は強い力が身体にみなぎっており、その状態を頭で強引に壊すことが非常に愚かなことなのだ、と理解させられた。



気をかけられた状態から強引に姿勢を戻そうとしている



この時、前からの力に対して驚くほど脆くなっていた



気をかけられ起き上がれない状態では乗られても強い



頭で考えて強引に起きようとしたときには乗られると苦しい



■ サンチンの型で重くなる
サンチンの型の姿勢をとることによって重くなり、持ち上げにくくなることが示された。これと対照的に、拳を握って力で気合いをこめるような動作を行うと軽くなって簡単に持ち上がってしまうことを示された。



サンチンの型で姿勢を作る



身体が重くなり持ち上げにくい



スポーツなどでみかける力で気合いを入れた動作



軽々と持ち上げられてしまう


■ 基本、姿勢
2日目の稽古は、基本の突き蹴り受けの動作や姿勢を再確認することから始まった。
宇城拓治師範代が号令をかける中、塾長は、四股立ちからの突き・受けの姿勢、引き手の脇の締めなど、塾生に対してきめ細かい指導を行った。また、分解組手の稽古では、腕受け逆突きの動作の中で、力に頼らないで強い腕受けの状態をつくるための指導や、相手に入られない突きについての指導があった。突きに関しては、突こうとする意識が前に出て体重も前にかかった状態では、相手に動きが読まれてしまうことから、体重を後ろ足にかけること、ただしこのことを頭で意識すべきではないことなどの指導がなされた。

■ 自分の心との対話
「相手と手刀を合わせて押し合う動きの中から自分の心身の状態を感じ取る練習」は非常に奥の深いものであり、左脳への詰め込みとスポーツの弊害によって育まれてしまった「対立の心と身体」から脱却するための稽古内容であった。
まず相手に手刀で押し込まれて止まってしまった状態で、心と体がどのように反応するかを観察するように指導があった。この状態になると、「困り果てて思考がストップ」したり、「いかに相手を押し返すか」という対立の思いが自然にわき起こってくる。即ち、衝突や対立につながる心身の反応が瞬時に作り出されてしまうのである。この時、相手を受け入れるように気持ちを解放すると身体も調和して結果的に有利な展開が生まれた。
この稽古は日常のいろいろな状況の中で活かせる場面がたくさんあると思われる。仕事の状況などで、窮地に追い込まれたときに活路を見出す鍵は、このような心の解放と調和であり、これに素直に従う行動が大切なのだと推察できる。それが自然な反応となるためには、このような稽古を繰り返し、心身を解放するクセを体にしみこませておかなければいけないのであろう。

今回の長野合宿では、少年部の子供達の鋭い技の成長と、宇城空手の上達に向けた長い道のりの小さな一歩を踏み出す方向性を見せていただいたように思う。調和の力で技ができる子供達が、左脳への詰め込み教育によってその身体脳が失われてしまわないように、守っていかねばならないと感じた。子供たちが創心館空手の型と分解組手を通して「調和の心と身体」を身に付け、社会に大きく飛び立って欲しい。改めてその思いを強くし、そして、多くの希望が与えられた2日間であった。


長野実践塾 濱渦康範

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