武道 第9 回宇城空手ニューヨークセミナーレポート2013/05/01 

2013年4月20 日(土)・21 日(日)、第9 回宇城空手ニューヨークセミナーが開催された。
19 日午前、JFK(ジョン・エフ・ケネディ国際)空港に到着した宇城憲治塾長を、創心館アメリカ支部(ニューヨーク・シアトル)のそれぞれの支部長、その家族、そして在米の塾生らが出迎えた。昨年のシアトルセミナーから約8 ヶ月ぶりの塾長との再会に、皆、笑顔を輝かせていた。



ニューヨーク支部長・エイブレムズ氏邸 前にて



■ 怯えと武器に対峙する日本の武術の教え「戦わずして勝つ」
JFK空港に到着直後、塾長のフライト中に、折しも4 日前に起きたボストン・マラソン爆発事件の容疑者のうち、一人が射殺されたとのニュースを耳にした。
「自由の国、技術・経済大国アメリカ――それなのに人々の心は、不安と怯えに支配されてしまっているのは、非常に残念で悲しいことです。犠牲者の方々の冥福をお祈りします」と、塾長はテロの犠牲者に追悼の意を表した。

続いてニューヨーク支部長・エイブレムズ氏邸にて昼食の際、アメリカの抱える銃規制の不確実さの問題が話題に上った。塾長は、銃でも素手でも剣でも共通する、「統一体」と、その「内面の力」を実演し、「入る」ことの重要性と、「銃を構える前にすでに勝負を決めていなければならない」という教えを実践とともに説いた。つまり、今日のアメリカのような、銃を持たざるを得ない環境にあって大切なことは、銃を持つ人の「心」であり、また統一体になっていてこそ身を守ることができる、ということである。

「生と死を分かつのは、限りなくゼロ秒に近い一瞬です。だから、日頃からスポーツ武道ではなく、武術のサンチンの稽古をしていって欲しいと思います。そしていざというときに使える技を身につけておくことです。そのようにしてリーダーが、『戦わずして勝つ』という修行をして人々を治めることが、平和への武術としての本質です。決して、相手を投げることや、相手を倒すことが武術の本質なのではありません。本質を見抜き、そこに近づく稽古を日々、していってもらいたいと思います。」(宇城塾長)

これを受けて、シアトル支部長ドラックマン氏は次のように感想を述べた。
「アメリカの銃問題は深刻で、ほぼ絶望的な状態と言っても過言ではありません。それだけでなく、今は長らく続く経済危機も影響して、非常に多くの国民が不安を抱え浮き足立っている状態にあります。しかし、宇城先生にご指導頂いた通り、『銃を持つ側の心によって変わる』、また『リーダーの人間の質によって変わる』と思います。そこに希望を感じます。また、宇城空手を日々稽古することの意義についてもお話いただき、大変ありがたく思いました。」


■何のために宇城空手を稽古するのか
ひんやりとして澄んだ空気と、強い日差しに包まれ、2日間のセミナーは行なわれた。初日はサンチンを中心に、姿勢と中心の重要性を型と検証を繰り返し行ない身につける稽古が、2 日目はナイファンチンで、目・身体・心の一致を、および瞬発力が指導された。宇城塾長の空手セミナーは、他の武道セミナーとは決定的に違う指導基盤がある。それは、「空手を通して自分の人生を見極め、自己に足りないものを知り、勇気をもって自ら変革し、進歩成長してゆくことにある。」






「型を通して統一体になり、身体に気を通すことがまず肝要です。気が通った身体は、自ずとその人の人格および人間力を高め、自然と生きるエネルギーに満ち溢れてゆきます。それが、周りの人にも伝わり、自然と人をひきつける魅力となるのです。」(宇城塾長)


■サンチンの型 二種類の呼吸
はじめに、サンチンの呼吸について詳細な指導が行なわれた。
まず、大きく吸い大きく吐く「リラックスし身体の免疫力を高める」呼吸。ここでは、口や胸だけで呼吸するのではなく、肚から呼吸することを学んだ。
「自分も相手も守って、なおかつ勝つというのが武術です。日常でも、人と衝突をしないということが大切です。それを呼吸からつくっていきます。」(宇城塾長)





この呼吸を使うと、例えば日常における握手でも、相手を無力化することができる、という実演が披露された。






次に、武術の呼吸が指導された。(武術の呼吸による瞬発力および無力化)


















「呼吸によって身体が重くなる」「気が通って身体が強くなる」「重く、強くなりながらも居つかない」などの検証も行なわれ、それをまたサンチンの型のなかに取り込んでいくというプロセスで稽古は進んだ。

この二つの呼吸の指導については、セミナー後の感想で参加者が多く言及していた。海外でのセミナー生は、塾長に直接指導を仰げるのは多くても年に2 回である。普段の一人稽古のなかで疑問に思っていた呼吸の仕方について明確な答えが得られ、今後の一人稽古の大きな助けを得られえたことに感謝したいという声が多く聞かれた。またセミナー終了後、「今日教わった呼吸を実践することによって日常生活でも自分の心を落ち着かせて、仕事にも取り組みたい」など、日常に活かしてゆく抱負を語る参加者も多かった。



通常は持ち上げられてしまうが



呼吸で重くなり



逆に2 人を投げられる


「このように、気が通ることによって重力ができ地球とつながって無限のエネルギーが引き出されます。このような身体では、日常でも相手に入り、調和することができるのです。」(宇城塾長)


■中心ができると「居つかない身体」へと変化することができる
中心の解説と共に、中心があるからこそ可能になる無力化について実演と共に指導された。
「武術の姿勢において重要なことは、中心を作るということです。中心がずれていたら、独楽も回ることができません。また、回っている独楽は、遠くからみると止まっているようにも見えますが、実は高速で回転しています。武術においても中心ができると、内面が高速回転するのです。それによって相手に入ったり、無力化するなどの技が可能になります。」(宇城塾長)



芯がずれていたら回ることができない。








中心があることによって統一体となり、掴まれていることに固執せずに、相手に入り無力化することができる。


この指導を受け、多くの参加者たちが「日常生活においても、つい一つのことに拘って相手と衝突してしまう。中心を作ることによって拘らない身心が作れると習ったので是非実践していきたいと思います」と後に感想を述べていた。


■日常に活かす武術の本質とは
このように、アメリカセミナーの参加者たちは、宇城塾長の武術指導を即、日常生活に活かす「人生即武術」という姿勢が徹底されているのが特長であった。これは塾長の指導原理そのものである。塾長は私たちに次のように説く。

「本来、スポーツとは娯楽や余暇に楽しむものでしたが、武術は生と死を分かつ瞬間のなかから生まれた『生き残る』ための術です。それは『自分を守り、相手も傷つけずに観念させ、調和する』という『戦わずして勝つ』究極の技にまで高められました。それが『気』による無力化、そして調和なのです。その武術を現代において修行する意味とは、何でしょうか。相手を投げたい、倒したいということではなく、相手に入り無力化し、調和ができれば結果として、相手を投げることができるのです。

『身体は内なる気によって動き、気は心の向かう処に応ずる』
『心の発動が技となり、形となる』


これらは、『戦わずして勝つ』を実践し、国の行く末を決めた昔の剣聖の言葉です。
すなわちすべてにおいて『心』が優先するのです。武術は、身体から、この心を作っていく修行なのです。ですから本来の武術は、現代においても日常生活や仕事に活かすことができます。そして日常生活において、調和の心、利他の心が実践できればまた、技も伸びてくるのです。すなわち『心豊かなれば技冴ゆる』とは、このことなのです。」

■日常のなかで「拘りや執着」を捨てるヒント
セミナーの終了後、ある参加者が塾長に、稽古をして頂いた「拘りを捨てよ」という意味の日本語を、サインと一緒に書いてください、と塾長の著書『Karate and Ki』を差し出した。塾長がそこに書かれたのは「型は美しく技は心で」という言葉であった。







「『拘りを捨てよう、欲を捨てよう、執着をやめよう、変わらなきゃ』と頭で思っているうちは、拘っている証拠です。とにかく無心で毎朝、型をやる。続けてゆくうちに、気づいた時には何かが変わっているはずです。頑張って。」(宇城塾長)



ニューヨーク支部   「本物の空手を一目見たい」と遠路はるばるイタリアからの参加もあった




シアトル支部



バンクーバー支部



(取材を終えて)
セミナーに同行させて頂き、宇城塾長の「人間学」、「武道を通して人を育てる」ということがどういうことなのかを、セミナーでの指導のみならず参加者へのインタビューも通じて、深く拝見させて頂いた。そこにあったものは、塾長の限りなく大きな愛と、まぎれもない正義、そして厚き友情であった。それはまさに「誠」、言葉と実践が一致して誠(まこと・真理)という一字に集約される人間愛であると思った。また、セミナーの参加者全員が、心からそれを求めてこの場に集まり、希望に満たされてまたそれぞれの厳しい日常へ帰っていく姿も、私の心に焼きついた。

遠く海を隔てた師弟が、真に心と心を通わせる場に居合わせた、非常に稀なる経験をさせて頂けたことに心より感謝申しあげたい。そして、これを日本の宇城門下生一同へ伝えることで、世界中で塾長の弟子たちが切磋琢磨の心を持ち、日々自らを高める修行に励み続けることを願う。


「稽古は自らの身心に厳しく
              心豊かにして絆は広がり 
                          一人革命は成長の証」  (塾長 宇城憲治)



どう出版 佐瀬めぐみ

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