武道 第10回 宇城空手ニューヨークセミナーレポート2014/05/15 

深さへ、真実へ ―― 人を変化、成長させる宇城空手セミナー

去る、2014年4月25日、26日、今回で10回目となるニューヨークセミナーがベッドフォードヒルズにあるマーク・エイブラムス氏の道場で行なわれた。セミナーには、アメリカ、カナダ、日本の各地から、これまで宇城塾長に指導を受けてきた常連受講生が結集し、さらには遠くドイツからフルコンタクト空手指導者を含むグループが初参加した。






このドイツからの参加グループの中心人物は、今年70歳となる空手暦50年の指導者F氏であった。長年、空手の道を追い求めてきたものの、技術面においてはもとより、分裂を繰り返すなど課題をかかえる組織の問題、勝敗に重きを置くあり方に疑問を抱くようになり、組織を離れ自分の理想とする空手を求め続けてきた結果、今回の塾長のセミナーに辿り着いたのだという。

F氏は、「これまでの50年の修行人生よりも、塾長による二日間のセミナーで学んだことがはるかに多かった」と語り、さらに自らが尊敬する沖縄の空手家・屋部憲通師(1866年〜1937年)の言葉、

「空手は生きる道である。
  であるからこそ、それはスポーツとはまったく異なる性質のものである。
    空手を単なる楽しむためや勝つために修行してはならない」

を引用し、「私は、宇城塾長の指導を受け、今ようやく、屋部先生が言われたこの言葉の意味を理解しました」と語っている。

誰もが現在の状況から抜け出したい、よりよい方向へいきたいと願い、解決の道を求めて教えを請う。しかし、変わるべきは、ほかの誰でもなく、周りの環境でもなく自分自身であることに気づいた時、気づかされた時、本当の変化への道へ進むことができる。
宇城空手セミナーは、まさに、その勇気とエネルギーを与えてくれる希望あるセミナーであった。

今回セミナーレポートを担当してくれたのは、6年前の2008年の第1回目からニューヨークセミナーに参加し、2011年からはシアトル支部長として、現地セミナー開催責任者ともなっているジョシュ・ドラックマン氏である。以下は、氏によるセミナーの詳細レポートである。


・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・

< 理にかなった一点を見つける >

セミナーの雰囲気はとても温かく、稽古は刺激的で心躍るものであった。全ての参加者たちは、空手のみでなく自らの人生のために、そして自己変革を求める心で、新たな学びを求めていた。

稽古では、サンチンとナイファンチンの型が空手の基本中の基本として奥も深いということで、この二つの型と分解組手を中心に指導が行なわれた。



サンチンの型


ナイファンチンの型


一人ひとりの型を指導する塾長


セミナーは、まず型からつくる自然な力を引き出すにあたり、呼吸を背中に流す大切さが説かれた。塾長はホワイトボードに、大地にしっかり根を張った大木の絵と、都会の高層ビルの絵を描き、幹が細くても地下に根を張っている自然の木は、上へ上へ大きく枝葉を茂らせることができ、また安定していること、しかし根を張らない都会のビルは、同じ状況では簡単に倒れてしまうことになり、さらには自然の木とは逆に上に行くほどビルを細くせざるを得ないことを指摘して、本当の強さとは、この自然の木が示すような、自然の力、自然の姿勢からくるものでなければならないことを、わかりやすく示した。

次に示されたのが、腰の柔らかさの大切さである。塾長は腰の硬さがとれ、腰に柔らかさが出るようになれば、外面ではなく内面で動きを処理できるようになること。またすべては相手がくる前に相手に入ることが大切であることを説き、常に身体の正しい呼吸の状態を保つことの重要性を説いた。

この、「相手に入る」実践では、一人が仰向けになり、もう一人が上から拳で胸を押さえてくるのを、呼吸をつかって中心をずらして投げる、といった稽古を繰り返し行なった。うまくできたりできなかったりする参加者に対し、塾長は、全員に気を送ることで全員にはっきりとした「できる」を体験させてくれた。それは、まさに我々が、型を通して練るべき「出来る自分」の姿そのものを、体験させてくれるものであった。




サンチンの分解「中割れ」の「入る」


「入る」を指導する塾長


▼ 中心をずらして投げる







型における「理の一点」を指導する塾長


さらに、塾長は木刀や真剣を使って「残心」とはなにかをその場で披露し、いかに「気持ち」を切らず、常に同時性多次元の動きが出来る状態でいる事が大事かを示した。塾長は、「残心」はサンチンなどの型稽古により自然に培われるものであり、そのことによって見の目ではなく、観の目が強くなっていくと説明した。

さらに剣の振りを行ない、正しく振れていれば「斬る、突く」が同時に行なわれている事が示された。塾長がこうして実際にやってみせる実践は、素手であろうが武器をもっていようが、流れを切らずに縦横な動きができるようになることの大切さをまさに身体に感じさせるものであった。

さらに、塾長は身体を強くする「理の一点を見つける」大切さを説いた。二人一組になり、一方が上げ受けの状態をつくり、その腕を相手に上から下へ負荷をかけるという検証では、ほとんどの受講生が力で頼ろうとするために姿勢を保つ事はできずに腕を下げられてしまうのだが、塾長に上げ受けの位置を正されると、とたんに筋力にまったく頼ることなく姿勢を保つことができた。さらには身体が自由に動く事が出来る。

塾長は、「どんな動きにも自分の本当の強さを作る場所、理の一点がある。その一点を見つける事が出来れば、自然な強さを引き出すことができる。そして何にもとらわれない完全な自由を得る事が出来る」と言い、型稽古によってその「理の一点」探す大切さを強調した。


< 心の発動が技となる >

相手に「入る」稽古では、まず、「入る」という欲を捨てなければならないことを塾長は強調した。ただ相手を倒してやろうという心でいるのは、家の中に土足で入るようなものであり、それでは永遠に入ることはできないと、塾長はわかりやすく説明してくれた。その時に実践したのが、相手に両腕を合わせてまっすぐ突き出してもらい、その腕をこちらが左右に開けるという稽古だった。塾長に気を送ってもらうと、力を使わずに自分自身の内面を開く事が出来、結果、相手の腕をも簡単に広げる事が出来た。まさにすべてが自分の心次第であることを、わかりやすく示してくれる実践であった。

また姿勢の大切さでは、帯を後ろからつかまれた状態で、姿勢をまっすぐにしたまま前に進む方法が指導された。きちんとした正座と礼を行なったのちに立ち上がって前に進むと、おおかたの受講生が、帯を掴まれていても前にしっかり歩くことができていた。いかに正しい姿勢が大事であるかを身を持って理解させてくれる検証であった。

また、今回のセミナーでは数々の素晴らしい空手技術はもちろんのこと、塾長のとてつもなく器の広い心を学ぶ機会となった。ドイツからの50年の空手暦をもつ70歳の指導者とその3人の弟子たちを快くセミナーに迎え入れ、その指導者が、人生でも武道で相当なキャリアを積んでいてもなお、熱心に学ぼうとするその姿勢と情熱を、大変歓迎されていたからだ。そしてエイブラムス夫妻宅でセミナー初日の夜に開かれるパーティーにおいては、塾長は参加者たちに、空手を修行するということは、自分自身のみでなく、周りを愛し、ひいては世界を守ることにつながること。大事なことは、「愛」であり、武道は人間を幸せにするものでなければならないことを熱く語った。


▼ ゼロ化し一瞬にして全員を崩す塾長




▼ 気を通し、参加者に同じことを体験させる





2008年より数え10回目のニューヨークセミナーを終え、参加した誰もが、宇城塾長が示した技と心、そしてなによりも空手への情熱に感動している。そして我々は塾長がアメリカに示してくれたビジョンと献身的なそのご指導に対し、感謝の思いでいっぱいである。

エイブラムス夫妻が、2002年のラスベガス合気エキスポ以来築いてきた塾長との強い絆、そしてその後に続いたシアトルでの絆、つづくカナダのバンクーバーでの絆は、ますます世界に広がりつつある。その仲間の輪にも心から感謝したい。そして、毎回のことであるが、塾長の心のこもったご指導と、塾長の空手に引き寄せられた情熱溢れる参加者たちを忘れることができない。











 
塾長は、今回参加できなかった仲間たちや、過去に1、2回参加された人たちに対しても近況を聞くなどして気遣いをみせる。こうした塾長の気遣いは、ニューヨークセミナーのとても特別なクオリティーである。宇城塾長にとり、参加者は、偶然出会った人間ではなく、また参加者達にしても、塾長の一人一人に対する深い愛情を感じており、このつながりこそがニューヨークセミナーにおいての私たちの宝となっている。

塾長は空手と居合道の究極の達人であり、かつては数千人を超える社員を抱えた企業のトップでもあった。そんな塾長が、セミナーに参加した全ての人を覚えておられ、気にかけてくださっている。このことは我々にとり本当にスペシャルなことだ。それこそが真心であると感じている。
宇城先生、誠にありがとうございます。
ジョシュ・ドラックマン(シアトル支部長)




第10回 ニューヨークセミナー記念写真




初日稽古後のパーティーにて 熱心に塾長の話に聞き入る参加者


・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・

上記のレポートを寄せてくれたドラックマン氏自身も、2005年にコロラドで開催された合気道の合宿に空手ではひとり招待師範として招かれた宇城塾長の指導を受けて以来、すべての塾長の海外セミナーはもとより、日本での稽古や合宿に熱心に参加してきた。それは、今回初参加したドイツからの空手指導者がいみじくも語った、「求める空手に、求める師にやっと出会えた」喜びと情熱そのものであり、エイブラムス夫妻と同じように、彼のすべての原動力になっていることは間違いない。

海外の塾長のセミナーでは、回を追うごとに、そのような熱心で、深さ、高さを求める受講生が、増えてきているのを感じる。

塾長に学んだ受講生は、最初こそは塾長の卓越した技術と気の実践に心を奪われるばかりだが、次第に、塾長の指導が、技術的なことだけではなく、その人が人間としてどれだけ成長できているかに向けられていることに気づく。そしてその気づきによって、自らの成長だけでなく、家族や仲間、周りの人たちの幸せ、ひいては、世界の平和を願うということへ、心が開かれていく。そこに向かうなかで、受講生の誰もが大きく進歩成長していくのである。

そうした大きな方向へ参加者の心が開かれていくことこそが、宇城空手セミナーの最大の特徴であり、またそれこそが、宇城塾長が新刊『ゼロと無限』で説いた幸せの法則、

「自分のゼロ化とは、『謙虚』になること『謙虚』になるとは、生かされていることに気づくこと
 それはすなわち、宇宙を分母にし、自分を分子に置くこと。
 謙虚を分母に、自分を分子に置くと無になる。
 そして60兆個の細胞に秘められた無限の可能性にきづくこと。」

への気づきにつながっていくのだと思う。


セミナー参加者の感想文はこちらへ。



左からシアトル支部長夫妻、バンクーバー支部長、宇城塾長、NY支部長夫妻(エイブラムス邸の前にて)
ニュース一覧に戻る