武道 岩崎雅典監督作品 上映会・講演会2014/11/23 

『道』の対談をきっかけに実現された上映会・講演会
去る11月3日、岩崎雅典監督作品「福島 生きものの記録」の上映会 及び 岩崎監督による講演会がUK実践塾主催により開催されました。
この企画は季刊『道』182号で岩崎監督と対談を行った宇城塾長が、岩崎監督の「一人でも多くの人に真実を知ってほしい」という願いに応える形で開催を決断し、UK実践塾の有志により企画し、どう出版の協力のもと実現しました。


【12:30】受付開始
当日正午過ぎより会場に来場者の姿が見え始め、予定通り12時30分に開場しました。
UK実践塾主催による上映会は、今回が初の試みであったという事もあり、原発事故後の福島を題材としたこの企画にどれくらいの人数の方々が来ていただけるかの把握が難しかったのですが、開場まもなく半分以上の席が埋まり、上映開始まで人波が途絶えることはなく、たくさんの方々にお越しいただきました。最終的には施設の最大収容人数180名を超える197名もの方々が来場されました。なかには子供連れの家族や、当日の案内を見て参加された方もおり、福島の現状への潜在的な関心の高さが窺えました。



年齢を問わずたくさんの方々が来場する




予想を上回る来場者に急遽客席を増席する


【13:05】上映開始
UK実践塾 三品氏による開会挨拶の後、満席となった会場で上映が始まりました。
今回上映された映画は、原発事故により被曝し、福島に取り残された野生動物、家畜、ペットなどの動物に焦点をあて、その事実、真実、変化を伝えるドキュメンタリー映画『福島 生きものの記録 シリーズ2 〜異変〜』でした。



開会挨拶をする UK実践塾 三品氏


映画は、国の線量計の設置方法に疑問を投げかけるところから始まりました。国の線量計は放射線量が低い場所に設置され、さらにその下には鉄板が敷かれていました。そこから数メートル離れた場所では国の線量計の倍以上の数値が出ている映像が映し出されました。

その後、斑点が見つかったツバメや牛をはじめ、ネズミやモグラなどの小動物、サル、イノブタ、淡水魚、昆虫、植物に至るまで、様々な福島にいる生きものの調査記録がスクリーンに映し出され、私たちがメディアによって得ていた情報とは大きく異なっている福島の現実が、様々な映像をとおし直接的に伝わってきました。
チェルノブイリと同じ症状がみられるツバメ、白斑が全身に出ている牛、触覚や羽に異常がある蝶、巨大化したタンポポなど、初めて知る福島の生きものの現状に私たちは大きな衝撃を受けました。

映画に収められていた記録は多岐に渡るものであり、それを文章でとても表現できるものではありませんが、映画を見て一貫して感じたことは、福島原発事故による放射能の影響は、収束するどころか今後どのような変化が出てくるかは誰にもわからず、全くの未知数だという印象でした。
それを裏付けるひとつとして、白斑の出た牛を国が調査する場面がありました。牛を飼育している牧場の代表者、吉澤正巳さんのお話では、「40年間、牧場をやってきて、牛に斑点などが出たのは初めてで、はっきりと被曝の影響が現れているんだと確信を持っている」との事でした。しかしながら国の調査結果は「現時点では放射能との因果関係はわからない」というものでした。
調査に立ち会った獣医師の方が「広島、長崎の原爆症は、急性の症状から、5、6年、20年で発症という症状まで様々な形があった。福島の牛の症状についても、今はわからなくてもデータを今後も積み重ねていくことが大事だ」というお話をされていた事が印象に残りました。

また映画では、福島で調査活動を続けている現地の方々、研究者、ボランティアの方の姿も映し出されていて、その半端ではない覚悟と行動力に驚嘆しました。ボランティアの方が「本来こういった調査は国が行う責任がある。何の情報も無いため、国や県がしない代わりに私たちが調査をしている」と話された場面が印象に残りました。


【14:45】上映会終了
上映開始から約1時間半、緊張感のある静寂とした雰囲気のまま上映は終了しました。
上映終了後、講演開始までの休憩時間に「福島 生きものの記録」のDVD販売も行われ、事前に用意したDVDはすぐに完売となりました。



上映終了後、講演開始を待つ来場者


【15:00】岩崎監督講演開始
どう出版 木村編集長による岩崎監督のご紹介の後、講演が始まりました。
まず講演の冒頭で、岩崎監督から「今までも上映会はありましたが、今回のような子供や若い人の多い上映会は初めてです。最終的には子供にこの映画のシリーズをどこまで残していけるかを最終的な目標にしているので大変に嬉しい限りです」とのお言葉をいただきました。



講演される岩崎監督


「福島 生きものの記録」の制作に至った経緯
講演では始めに、岩崎監督が30年以上にもわたり野生動物の生態の記録映像制作に携わってきたご自身の経歴と、映画「福島 生きものの記録」の制作に至った経緯を話されました。
岩崎監督は、最初に携わった番組「生きものばんざい」をきっかけとして、様々な動物を調査取材し、演出家、ディレクターとして9年間番組を続けられました。番組終了後も、元来自然がお好きであった岩崎監督は、奥深い動物の生態を「もっと知りたい、調べたい」というお気持ちから、より制約のない記録映画を撮るため、映画製作会社 群像舎を設立されました。その後も動物の生態を調査し、多数の作品を制作されるなかで、動物の生態が住んでいる環境によって大きく左右する事がわかり、講演会でもご自身が調査したイヌワシの生態や薬害による奇形のサルを例にとりながら、そのことを分りやすく私たちに話していただきました。

そして2011年3月11日、福島原発事故が起こりました。
事故後様々な報道がされるなかで野生動物などの取材はほとんどされていませんでした。そのような状況のなかで、岩崎監督に「かつて取材した薬害を受けたサルと同じく、放射能で被曝したサルはどうなっているのだろう」という思いが生まれ、「生きものの生態は長期間記録しなければわからない、この放射能汚染によ る影響は記録しなければいけない 」というお考えのもと、後先考えず仲間と共に福島へ行かれ、この映画の制作に至ったお話をされました。
宇城塾長や『道』に掲載されてきた方々と同じく、岩崎監督が「考えよりも行動実践が先にありき」の方であることを講演を聞き改めて実感しました。




岩崎監督(左)と映画を上映して頂いた群像舎の方(右)


風化させてはならない福島原発事故
次に、スライドショーで資料を見ながら、最新の福島の状況を交え、映画の解説をしていただきました。
天候の影響により放射能汚染が原発立地町以外に及んだことや、動物の異常を発見した時の状況、動物を捕獲し線量を測る難しさ、動物の種類によっ て放 射線量が違う理由、警戒区域で動物の飼育を続ける方の活動など、映画の内容をより掘り下げた様々なお話に来場者は真剣に聞き入っていました。

またこの映画では、被曝の影響が出ている動物だけではなく、現時点では影響の出ていないカエルやサルなどの調査も続けている事を講演で説明していただきました。
特にサルは、生後成熟するまでに6、7年の時間がかかり、2011年に被曝した子ザルが大人になるのはこれからで、今後変化が出てくる可能性があるため注目して調査を続けていくことを話されました。さらには、現在調査できているサルは全体のほんの一部で、線量の高い南相馬市や飯舘村などの調査は行われていない事も話されました。調査できない理由のひとつとして、サルは牛や猪とは違い人間が食用としている動物ではないため調査は不要である、という国の見解があるとのことでした。

岩崎監督は、この映画製作に携わってきた経験から、目に見えない、匂わない放射能というものが生物に及ぼす影響を、科学的に証明することがいかに難しいかを話され、そのうえで、結果がどうであれ事実を調査しデータを取り続けていくことの大切さを語られました。

岩崎監督が講演の最後に「原発事故の収束などはとんでもない話で、まだまだ汚染水などの問題をたくさん抱えているわけですから、我々に出来るのはこの問題を風化させず、皆で考えていく事じゃないかと思います。ささやかな記録ですが、今日来ていただいた皆さんに、この事 を少しでも他の人に伝えていってもらえれば嬉しいと思っています。」と話されました。


【15:40】上映会・講演会終了
岩崎監督は、次回作の撮影でご多忙のなか、今回急遽開催となったこの企画の講演依頼を快く引き受けて下さり、この日も時間めいっぱいまで貴重なお話の数々を語ってくださりました。あわせて約3時間の上映会・講演会でしたが、小さいお子さんや若い方も多いなか途中退席もなく、参加者の方々は真剣に岩崎監督の言葉に耳を傾けていました。

今回の上映会・講演会を通し、私たちの想像とはかけ離れていた福島の現実を知りました。そして人間の手には負えない原発事故という問題に真正面から立ち向かっている、岩崎監督を始めとしたたくさんの方々の存在を知る機会をいただきました。今も終わりのない道を走り続けている岩崎監督を、これからも宇城塾長のもとUK実践塾で微力ながら応援させていただきたいと思います。

 高尾裕一郎(東京実践塾)
 中村充弘 (東京実践塾)
  

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