「対岸の火事」では済まされない
ロシアのウクライナ侵略戦争は「対岸の火事」では済まされない。
2018年6月、ドイツベルリンでのヨーロッパ空手セミナーを終えたあと、かねてから地下シェルターがどこでも常設されているという永世中立国・スイスを訪れた。街を歩いて確認すると、全店に核シェルターが備え付けられていた。
スイスは1960年代以降、国民数より多く収容できる数(114%)の核シェルターの設置が法律で義務付けられている。
そんなスイスの商店街でモデルガンを見つけたので、土産に買おうと思ったら、全て本物の銃であった。
2022年5月6日、日経新聞のコラムに、スイス政府が冷戦下の1961年に全世帯に配布したという冊子『民間防衛』が紹介されていた。他国を絶対に侵略せず、他国からの侵略も決して許さない永世中立国スイスだが、しかし冊子には、万が一戦火に巻き込まれた時に国民が取るべき対処法が具体的に記されているという。記事では「精緻なシミュレーションが描く戦争の様相は、ぞっとするほど現代の世界と似る」と記している。
「弾着のにぶい音がして、夜の空気が振動する/あちこちで避難所は直撃弾の下に崩れていく。ある地下室は全滅した。これが戦争の現実だ。生きようと思えば戦わなくてはならない」――
たとえ敗れて占領されたとしても終わりではない。最終章ではレジスタンス(抵抗運動)の心得を説く。「勇気を失うな。絶望にとらわれてはならない」。同時に「黙って好機を待て/一人として国民の中から無駄に死ぬ者を出してはならない」。
―― 日本経済新聞 コラム「春秋」2022.5.6より ――
この核シェルターに見るようにスイスはまさに有言実行で、危機に対する備えをしている。そのような観点からすると、日本は政策論争のみの実行なしで、完全な手遅れ状態、遅きに失している。一体どうするのか。
「対岸の火事では済まされない」
まさに今、先を見据え、希望あるビジョンを持つことが必要ではないか。
常に変化している社会情勢や地球環境に対して追従するスピードを持つことが重要である。それにはまず、人間には今の常識にはない潜在力すなわち人間力があることに気づくことである。人間力とは寄り添うという現代の対立力をはるかに超えた調和力である。宇城空手の根源・気は、そのことを教えている。
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