総合地球環境学研究所所長/霊長類学・人類学者 山極 壽一
40年以上ゴリラ研究に携わり、その第一人者として、また霊長類学者として、ゴリラ社会のあり方から人間のあるべき姿を見つめてきた山極壽一先生。長年の観察研究で気づかされたことは、ゴリラの中に見る、人との共通祖先の姿にこそ、本来の人間らしさがあるのではないかということだ。終わりの見えない戦争や、新たな衝突の危機に晒されている今、ゴリラが実践する闘いの平和的仲裁のあり方や相手の立場を尊重する共存の仕組みに学び、人間が忘れつつある気概、気構えを取り戻すことが急務だと語る。
ゴリラが示す「勝ちをつくらない」生き方と、江戸時代の剣聖が示し宇城憲治氏が体現する「戦わずして勝つ」のあり方をベースに、今私たちがかかえる課題について縦横に語り合っていただいた。
山極 壽一(やまぎわ じゅいち)
1952年東京都生まれ。京都大学理学部卒、同大学院理学研究科博士後期課程単位取得退学。理学博士。
ルワンダ共和国カリソケ研究センター客員研究員、日本モンキーセンター研究員、京都大学霊長類研究所助手、京都大学大学院理学研究科助教授、同教授、同研究科長・理学部長を経て、2020年まで第26代京都大学総長。人類進化論専攻。屋久島で野生ニホンザル、アフリカ各地で野生ゴリラの社会生態学的研究に従事。日本霊長類学会会長、国際霊長類学会会長、日本学術会議会長、総合科学技術・イノベーション会議議長を歴任。現在、総合地球環境学研究所所長。著書に『ゴリラからの警告「人間社会、ここがおかしい」』(毎日新聞出版)、『「サル化」する人間社会』(集英社)、『共感革命』(河出新書)等。
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